『魂』を揺さぶる読み物

一流チーム・・・by芭麗人さん

『お前ら、あんなチームに何点取られるんだ?何のために毎日練習しているのだ?恥を知れ』かなり強い口調でA高校の監督が試合後選手達にどなっていました。

A高校は『A高校のバレー部にいる』ということがステータスになるそんな学校で中学時代県の代表クラスの選手がレギュラーはおろか3年間ベンチにさえ入れなほど沢山入学します。そして監督は名門の伝統を引継ぎ、「優勝させる為に赴任した」と自他ともに認める人であり『うちはしつけを重んじている』と言うのが口癖であり、体罰もいとわず そんな指導に対して監督は「うちの保護者は『どんどんやってくれ』と言っているし、万が一自分の指導に不服従の親が何等かの行動に出たときには、それをきちんと抑えるように組織もしっかりしている。それでなければ全国を狙うチームの指導なんて出来ない・・・」と語るのです。・・・・・ある意味では『これだけの環境のチームを指導してみたい』と沢山の指導者に言わせるような・・・

さてその監督に『あんなチーム』と言われたB高校(世間では『底辺校』と呼んでいる)は確かにA高校とは対照的であり髪の毛が赤く、耳にはピアスの穴が開いているような選手のいるチームで、シューズも不ぞろいであり試合前の練習も『これで試合になるのか?』と思わせ・・会場の失笑をかうようなものでした。

久しぶりの大会出場でした。バレー部といっても、活動らしい活動はなく部員も毎年入部してくるものの一人抜け二人抜け・・夏を過ぎる頃になると活動を停止する・・そんな状態でした。それでも現在の三年生は一年の終わりまで4人になったものの頑張り続けて次に入部してくる者を待ちましたが入部は0でした。しかしその年赴任してきたC先生がいつも顧問のなり手をたらい回しにされている、そんなバレー部の顧問を引き受けました。C先生もバレーは未経験でした。しかし彼女らと毎日毎日体育館の片隅で、校庭で4人と一緒に練習をし、ある時には近隣の高校で選手を2人借りて練習試合も行いました・・・そして暑い夏をそして寒い冬を乗り越えこの春を迎えたのです。

先生は彼女らを何とか試合に出したいと、生徒と一緒に新入生の勧誘をしたのです。

『今なら、あなたもレギュラーになれる』・・彼女らの書いた勧誘の為の看板はふざけたもののように見えましたが必死でした。    結果2名の生徒が入部をしました。

そしてその6名で念願の春の大会に臨んだのです、しかしそれは3年生4人の引退試合でもありました・・・彼女らの相手は強豪校A高校でした。

彼女らはボールに飛びつきました。3年間の思いをぶつけるようにボールに食らいつきました。それは誰が見ても『華麗なバレー』とは言いがたいものでした。

しかしA高校が彼女らの気迫に何度も押される場面もありました。

私はそんな試合を固唾をのんで見ていましたが結果は明らかでした・・・。

しかし彼女らの姿はチームワークのすごさを私達に見せてくれたのです。

試合の後彼女達と先生が体育館の外で輪になっていました。

上級生が汗と涙を流しながら『ありがとう』と一年生と先生に言いました、一年生が『2人でこれからも頑張ります』と言いながらまた涙を見せました。そして先生も『よく頑張ったな。嬉しかった』と涙をぬぐっていました。

このやりとりを聞いていて、もしかしたら今彼女ら、そして先生は日本一幸せなバレーボーラーかもしれないと思ったのです。

(私にとって『日本一』という言葉はこういう時にこそ使いたいのです)

そしてこの瞬間に私はこの先生に『負けた』と思いジェラシーを感じたのです。

実は私も彼女らや先生と握手をしながら涙が出てきたのです。

バレーがうまくなることだけで生きていくことは出来ないのです。

おそらく一生の間で一番大切な時にバレー(それが何であっても)に打ち込むことは素晴らしいことだと思います。そしてそれが日本一になったとしたら、それまたすごいことだと思います。

私はスポーツをやるいじょう『日本一になる為の努力はすべきだ』と思っています。

しかし同時にそれに伴なった『心が育たないような日本一は全く意味がない』とも思っているのです。 そしてバレー部の活動がありがちな学校の宣伝の為に、選手を特別な待遇で扱うことや、選手を使い捨てするような・・・そんなものであったら・・そして全国大会がそんなチームばかりが集まって競う為のものであったら・・・バレーの存在さえ否定したくなってしまうのです。

さて前述の全ての環境が整った中でバレーが出来るA高校の選手達と、対照的な形のB高校の選手達・・どちらが高校生活で学ぶことが多いのか?

そして学校の部活はどうあるのが?と複雑な気持ちになるのです。

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