スリーメンの効果的練習法
スリーメンの目的
練習はすべて試合で役に立つものでなくてはなりません。スリーメンでも同じことです。それではスリーメンは試合でどのように役立つ事を目標とすべきなのでしょうか?以下に主な目標を掲げておきます。
1.選手間の連携を良くする。(声を掛け合う、他のプレーヤーの意図を見抜くetc.)
2.試合での後衛の動きを覚える。
3.打ち手のフォーム等からの予測能力を高める。(フェイントか強打か見抜く、スパイクのコースを予測する)
4.つなぎのプレー(二段トスなど)を身に付ける。
5.ボールを繋ぐ執念、自信をつける。
こんなところでしょうか?これらの目標はいずれも大切でおろそかには出来ないと思います。しかしこの中で2.と3.については、試合で役に立てようとする意識が足りないチームが多い様に感じます。以下その事について書いてみます。
「2.試合での動きを覚える」について
従来のスリーメン
スリーメンを下のようなフォーメーション、動きで行っているチームを良く見かけます。
センターがワンタッチを拾い、両サイドが真ん中に落ちるフェイントを拾うというフォーメーションです。良く見かけるというよりほとんどのチームはこのような練習をしているのではないでしょうか。
しかしこのフォーメーションでやるスリーメンには致命的な欠点があります。それは試合中このようなフォーメーションを採ることは、現在では非常にまれであるという点です。試合中にこのフォーメーションを採るべきなのはセンターオープンに対応したときぐらいです。
「Aクイック相手ならこのフォーメーションで良いじゃないか。」と考える方もいらっしゃるかもしれませんがそれは違います。クイッカーが両コーナーの奥に打ってくるタイプである場合にこのフォーメーションでは無力だからです。またもう一つの理由は、一本目のドリブルがとられない現在のルールでは、ワンタッチボールをセンタープレーヤーだけに処理させる必要はなく、センタープレーヤーも速攻のレシーブ(フェイントカバーなど)に積極的に参加すべきだからです。
また、このスリーメンは試合に役立たないばかりではなく、ある弊害すらもたらします。それは両サイドのプレーヤーがコートの内側によってしまう癖をつけてしまうという弊害です。
このスリーメンではある程度内側に寄った方がボールを繋ぎやすいので、どうしても両サイドは練習中内側に構えるようになります。打ち手がコート中央へのフェイントを多用した時は特にそうです。
それでは試合中両サイドが内側でボールを待つようになり、ストレートレシーブへ下がる事が困難、あるいは不充分になってしまいます。
ではどのようなフォーメーションが良いか
次に試合で役立つスリーメンのためのフォーメーションを考えてみます。まずはスリーメンの試合での状況を想定してみましょう。私はスリーメンは試合中の速攻を想定して練習した方が良いと思います。なぜならサイド攻撃の対策はシートレシーブで行ったほうがより実戦的だからです。
速攻対策のフォーメーションと言う事は試合中の基本のフォーメーションと同じものですが、私は右図のフォーメーションを採る事を提案します。このフォーメーションをサッカーにちなんで「フラットスリー」と呼んでおきます。(それに対して従来の守り方を「スイーパーフォーメーション」と呼ばせていただきます。)
このフラットスリーフォーメーションの特長は
1.センタープレーヤーがコート中央のフェイントを拾う事になっているので、両サイドが中によらずに済む。つまり相手クイッカーの特徴に合わせて適切なポジションニングができ、また平行に対してストレートレシーバーもポジションニングが容易になる。
2.ワンタッチボールを三人で処理できる(昔と違いオーバーでワンタッチを処理できるため、三人ともあまり下がる必要はない)
3.バンチリードブロックと相性が良い(バンチリードブロックが機能している場合、相手クイッカーはコート後方を狙うのがセオリーなので、サイドレシーバーが後ろで守れるフラットスリーはとても有効です)。
といったところでしょうか。ほかには、平行に二枚ブロックがつく場合はワンタッチボールケアのために後ろに下がる事も出来ます(ブロックが二枚つくくらいだからその余裕はある)し、平行にブロック一枚の時はクロスレシーブなどに参加する事も簡単です。
なお、相手スパイカーに対応して後ろ気味に構えた時、セッターのツーや速攻のフェイントに弱くなるのは確かです。しかし前衛がレシーブ参加の意識を高める事により克服できるはずです。例えば速攻だとわかったらブロックしない前衛(=オフブロッカーといいます)はすぐに一歩でも下がる様訓練しておけばかなり拾えるようになります。
「3.予測能力を高める」について
上で述べた速攻対策のスリーメンとは別の練習として、予測能力を高める事を主眼としたスリーメンを行うのも良いかもしれません。というか、一般に行われているスリーメンはこれが目的なんでしょうね。それから、この目的ならシートレシーブでも代用できはしますが、有機的に機能したチームレシーブを植え付けるには打ち手を統一した方が良いので、スリーメンで行うほうが良いかと思います。そしてこの練習は打ち手の技術や意図が練習の成果にモロに現れます。
最初に、予測能力を実戦レベルまで高めるためには二つの段階があることを意識しましょう。予想し、予想通りのボールを処理する段階と、予想外のボールにも対応できるようにする段階です。重要なのは、チームがどの段階の練習をすべきか把握し、意志統一をした上でスリーメンに取り組むことです。このことは意識されている方も多いですが、一応それ以外の方の為に書いておきます。
(1)予想通りのボールを処理する
まずは下のコンビとその対応策について想像してみてください。
例えば、相手がライトからバックセミに入った場合、ストレート側にフェイントと言うのは常套手段です。ブロックはどうしてもクロスを止めにいかなければならないのでこのフェイントは後衛レフトがレシーブします。(センターブロッカーは間に合わない場合が多いです。)
ところがライトスパイカーが上手だと、後衛レフトが前に出てくるのを逆手にとってストレートに打ってきますので、その対策として後衛センターがストレートレシーブに入ることになります。そしてこれが大事なのですが、このポジションニングはトスが上がった瞬間から、もしくはもっと前から開始するのです。
試合では、この例に限らず前もってポジションを移動しておくべき状況が生まれます。そのような時にセオリー通りに動けるよう練習しておくと良いでしょう。そこでスリーメンでは、打ち手の動きから次の展開を予想し、予想した通り素直にポジションニングする練習をまずすべきです。上の図の例でいえば、打ち手はボールを打つだいぶ前からレフトを向いてフェイントの構えをすると良いでしょう。レシーバーはその打ち手に呼応してしっかりポジションニングすることを主眼にした練習です。
この時、打ち手がボールに触れる瞬間にはレシーバーは必ず止まっていなければならないなど、基本は必ず守る様にすべきですので注意して下さい。ただ、スパイクレシーブと違い、フェイントカバーに関しては動き続けても良いかもしれません。動いている方向にボールが来る可能性が非常に高いからです。
なお、この練習は一通り狙いの動きを確認した後は試合の流れでも実際にその通り動けるよう、流れ重視で行うと良いでしょう。
(2)予想外のボールに対応する
まず上記の練習を積むべきなのですが、これだけでは予想外のボールに対応する能力が高まらず、悪い事にはサボり癖がついてしまいます。そこである程度基本の動きを覚えたら次はその予想をはずしたボールも混ぜるべきです。
ここでいう予想をはずしたボールというのは大したことではありません。レフトレシーバーの方を向いてライトレシーバーに打つとか、強打のフリをしてフェイントなどの一般的スリーメンでよく使われているものです。
実戦ではスパイカーは必ずしも予想通りのコースに打ってきませんし、ブロックにかすってコースが変わる場合もあります。それに対処するには素直なだけではダメだと言う事です。ではレシーバーが予想外のボールに対応するためのコツを挙げておきましょう。
1.ボールが自分のとこには来ないと油断しない・・・・・打ち手がレフトレシーバーの方を向いているからと言ってライトレシーバーは二段トスを上げる準備をしてはいけません。そんなシチュエーションは実戦ではありません。
2.打ち手がボールに触れる瞬間にはレシーバーは止まってしっかり構える・・・・・このためには最初のポジションニングの動きを素早くする必要があります。また、動いていても同じぐらいの範囲のスパイクを上げられると言う人もいますが、レシーブしたボールの質が違います。
3.予想外でもくらいつく・・・・・基本ですが、意外とあきらめの良い人は多いです。いままであきらめていたボールにも飛びついてみましょう。きっと上がります。
4.予想外のボールをも予想する・・・・・今現在予想外なプレーでも、見慣れると予想できるようになるプレーもあります。究極的にはこれがベストです。
最後に、スリーメン(に限りませんが)はチーム全員で練習の意図をはっきりさせて行うべきであるということを強調しておきます。
(2000年2月)