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スパイクと回内−回外運動

  バレーボールのスパイクやサーブを打つ時は前腕を必ず回内してボールを打ちます。ボールにフィットするように手のひらの面の向きを変える動きだからです。

  左の絵のように手を下げた状態は前腕が回内している状態ですが(バスケットボールのドリブルの手の格好です。)そのまま手を右肩の前に伸ばすと丁度スパイクやサーブのヒットポイントに来ます。体の前のボールを打つという動作には前腕の回内が、手のひらの面をボールに合わせるためにどうしても必要です。



  回内はスポーツの現場ではもう一つの意義があります。「ヒトが上肢で大きな力を発揮する時には前腕を回内した状態で使う」という原則です。これは雑誌「Sportsmedicine Quarterly」(Book House HD刊 1995年 No.16,17)にある渡会公治氏の「プロの技術はプロネーション」という記事に詳しく解説されています。プロネーションとは英語で回内という意味ですが、この記事で回内での運動の実例としては「相撲の押し、突っ張り」「砲丸投げ」「槍投げ」「野球、ソフトボールの投球」「バッティング」「剣道の構え」「テニス、バドミントン」「弓道」「空手の肘打ち、正面突き」「ボクシングのストレートパンチ」「バレーボールのサーブやスパイク」「水泳のストローク」「柔道の投げ技」が紹介されています。上の動きはすべて大きな力を発揮する時の動きで、前腕を回内して行っています。

回外時の骨の軸
回内時の骨の軸

  前腕を回内にすると大きな力が発揮出来るということを説明した図です。前腕部には橈骨と尺骨の2本の骨があります。回内すると2本の骨がX状に交差します。回外している時は骨の中心軸を通る線を結んでも折れ曲がった線となりますが、回内では一直線上に並びます。肩関節でスイングされた腕は一直線にボールぶつかり、力のロスが少なくなります。さらにこの線上に上腕と前腕の骨の大きい、強度に優れた部分(上腕骨顆部と橈骨末端部)が並びますので、スイング時の力を伝える効率が高くなると考えられます。


  スパイクで腕を前方に振りだす直前は左の写真のように前腕は回内と回外の中間にあります。手は小指側からボールに近づいていきますので、このようなボールへのアプローチを「手刀を切るようにボールに手を当てる」という表現もあるようで、。このバックスイングの局面から実際のボールヒットの間に前腕の回内運動が起きて打つ瞬間にはボールに手のひらの面が合います。


  上の絵のようにスイングにしたがって前腕の回内が起きて来て、ヒットの瞬間に回内の位置となります。

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