オーバーハンドパス(5/5)
ボールキャッチ後のスローの過程を最後に少し考えてみます。
左はオーバーハンドパスの動画です。構えの姿勢からボールキャッチの時には親指と人差し指でボールをはさむようにしていることと肘がボールが手に入ってからは屈曲していない事がわかります。さらに気がつく点は膝を軽く屈曲するようにしていますが、ボールをキャッチしてからは決して後ろや下に下がる動作はありません。前方のパスではボールへの力はあくまでも前方へかけるべきですから後ろへ下がる動作は力のロスです。
ボールをパスする手はボールの幅で最後まで伸びています。「ハ」の字に広げてパスする選手もいますが、ボールの当たる指の面が変わってきますからボールにかかる力の大きさと方向が変化してしまいますから安定したパスとなりません。
ボールを飛ばす時には肩関節(内旋)、肘関節(伸展)、手関節(屈曲)、指関節(屈曲)を動かして前方のボールに力を伝えます。
左のイラストは肩と肘と手の関節の回転の軸です。ボールが飛ぶ方向に垂直で、また各軸は平行の関係にあります。軸が平行にあるために各関節の動きは滑らかに連続しています。
手関節の動きだけを取り出してみると、上の写真からモデル化したイラストでは「ボールキャッチ」の動きも「引きつけ」の動きも「ボールを飛ばす」動きも軸は一つです。手関節の動きを観察すると「引きつけ」では『「伸展」+「橈屈」』で「ボールを飛ばす」には『「屈曲」+「尺屈」』の動きです。言い換えると手関節の回転の軸は手関節に対して斜めの軸となっています。
オーバーハンドパスについて一から述べた訳ではありませんが、ポイントと考えた部分を書いてみました。
最後に少しだけまとめを書いておきます。
(1)オーバーハンドパスの前半はボールキャッチ。
ボールキャッチはオーバーハンドパスの技術の70%位を占めると言ったら過言でしょうか?私はそのぐらいに重要と思っています。ボールキャッチは親指と人差し指でボールをはさむようにします。この時、親指はボールの方向に前に出ます。中指はボールの方向を定め、回転運動の軸になる目安となる指と考えます。
(2)ボールが手に入ってからは肘も体も後ろに引かない。
ボールは前に飛ばします。指と手を使ったボールの減速以外は力のロスを考えると肘も体も後ろに下がる動作はしてはいけない動作です。バックトスでもボールを飛ばす方向と反対には下がらない原則は当てはまります。もっともセッターで時間差のトスなどのフェイクトスの高度な技術ではあえて肘を曲げる時もありますがこれはしっかりパスが出来るようになってからの技術と思います。
(3)「キャッチ」は手首で「スロー」は肘と肩で
「スロー」の過程で手首を使っていないというわけでは絶対的にありません。動きのメインとなる関節を書くと表題のようになります。「キャッチ」の過程を肘や肩で行うと不安定なパスとなります。「スロー」を手首だけで行おうとするとボールは余り飛びません。実際オーバーハンドパスが苦手な人は「キャッチ」を肘の屈曲で行おうとしてタイミングの悪い、ひどい時はホールディングになるようなパスとなっています。手首を硬く使うとボールの引きつけが少なく、死んだボールとならずに回転するボールとなります。
(4)ボールを前方に飛ばす時の関節の回転軸を平行に揃える。
上肢の関節の回転を滑らかにして効率よく力を伝えるためには各関節の回転軸を一致させる方が有利です。
パスが上手にとばない選手では軸の方向がバラバラになっている場合があります。オーバーハンドパスの練習法に直上パスを一人で連続であげる練習がありますが、この練習では軸を合わす感覚が自然と身につくと思います。
私の考えは合っている事も間違っている事もあると思います。「そうだ」「いや、ちがう」という意見の交換でプレーのヒントになれば幸いと思います。
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