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オーバーハンドパス(4/5)

  オーバーハンドパスの指の働きだけでなくさらに手首の働きも考えてみます。ボールの勢いを減らす過程には手首の働きが最も重要です。

  この動作の観察に参考になる話として…。私の大学時代の友人に大学祭での「生卵キャッチ」のチャンピオンがいました。いかに遠くから投げた生卵を割らないようにキャッチするかが競技の内容でした。地元のテレビ局が取材に来る位のイベントでした。彼のキャッチングを見てみると

  卵が手に触れるとスーッと肘を曲げて卵の勢いを殺してしまうのです。もう一度、卵で運動量の公式を書くと

飛んでいく卵の運動量向かってくる卵の運動量[手の力]×[力が作用する時間]

  卵はキャッチされて運動量はゼロとなりますから

向かってくる卵の運動量 [手の力]×[力が作用する時間]

  となります。この式の左辺はマイナスとなりますから卵にかける[手の力]はたとえ肘を曲げて引くような動作であっても卵の飛んで来る方向の反対方向となります。卵をキャッチする時の手の力が大きいとグシャッと卵は割れてしまいます。卵を割らないためには[手の力]を小さくして[力が作用する時間]を大きくする必要があります。この力をセーブしながら徐々に卵に力を加える動作が手を引きながらキャッチする動作に見えるのです。

ボールをキャッチする直前とキャッチの瞬間の写真です。肘がキャッチの前後でほとんど動いていません。上の生卵キャッチでは肘を使って減速していますが、バレーボールキャッチでは肘の動きは使わず、手首の動きのみで減速するのがポイントです。「よくボールを引きつけてからボールを飛ばしなさい」という言い方がありますが、この時、肘を曲げて引きつけるのではなく、手首を背屈させて引きつけることが正しいと思われます。


  Poser4という3Dソフトでこの二つの写真のポーズを再現してみました。このソフトでは立体画像が描けて360度どこからも観察する事ができます。



  肘の屈曲はほとんど変わっていませんが手首と指の背屈は大きく、ボール引きつけている事がわかります。

  左のグラフは寝た状態行ったオーバーハンドパスの指と手の動きをを横から観察した研究です。(大学男子バレー部が被験者となっています。)赤線は指先の移動距離、青線は手首の移動距離、黄緑線は手首を基準とした指先の相対的な移動距離となります。動く関節について考えると指先の動きは手関節の動きで手首の動きは肘関節の動きに相当します。T1はボールが指先に接触した時間で、T2はボールが指先から離れた時間です。つまりT1-T2の間ボールは手の中にあります。
  T1でボールが指先に触れると赤線は下に下がり、その後、上昇します。つまり背屈によるボールの引きつけがおき、ボールを前に送ろうとします。一方青線は下向きに動くことなくボールが手に触れると上昇を開始します。この研究ではボールの勢いを減ずるのは手関節で、ボールを飛ばすのは肘関節の伸展と手関節の屈曲であることがわかります。


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