コンビの考え方
お待たせ致しました。以前から要望の多かったコンビ論です。今回は総論ということで基本的な考え方をまとめてあります。なお、出来るだけブロックシステムを先に読んでおいて下さい。
相手の弱点を突こう
コンビの最も有効な使い方は、相手のブロックシステムに弱点がある場合にそこを突くことです。例えば相手がバンチブロック(=ネットの中央付近に三人のブロッカーが固まっているシステム)の時は速い平行はノーマークでしょうし、Bクイックに対し必ずコミットで跳ぶセンターブロッカーがいる場合、「B−セミ」のコンビでノーマークが造れるわけです。もっとポピュラーな例では低いブロッカーを狙い打つのも一つのコンビといって良いでしょう。
そして各論で様々なコンビを説明しますが、そこでも「このコンビはこういう弱点を持っている相手に対して有効だ」という例を挙げておきます。それをしっかり理解して覚え、少しずつ実戦で試していくことで、初めて対戦する相手でもすぐに弱点を見つけられるようになるかもしれません。
<例>ノーマークを狙える弱点
・極端なバンチ、または逆に極端なスプレッド
・コミットブロックにこだわっている
・エセリードだがセッターのフェイクに簡単にひっかかる人がいる(ひとりでもOK!)
・リードブロックにこだわっているが速攻を止められないブロック(速攻を上げ続けましょう)
etc...
<例>その他の弱点
・際立って弱いブロッカーがいる(出来ればミスマッチを作りたい)
・サボりグセがある(B平行に対してレフトがブロック参加しないとか)
・センターブロッカーの判断、移動が遅い
・誰をマークしているのかが判りやすい(相手の観察は重要です)
・サイドブロッカーが速攻のブロックに参加しない、あるいは苦手(ありがち)
etc...
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そのコンビでどうやって決めるのか、イメージを明確にしよう
コンビのよっては、最初から誰が打つのか決まっているものもあります。相手によっては「B−ライト平行」がこの例に当たります。センターブロッカーはどうもクイックは絶対に決めさせたくないという意識が働くものらしく、「B−ライト平行」に対してはBをマークに行きがちです。こうしてライト平行に対しブロックが常に一枚という状況を造れるのです(相手によっては、です)。
逆にここには上げない方が良いと決まっている場合もあります。「平行−C−ライト平行」というコンビの時に一箇所だけここには上げない方が良いという場所があるのですが、さて、それは一体どこでしょうか?(答え)それはライト平行です。相手がリードブロックならまず確実にライト平行には二枚ブロックがつきますし、コミットでも二度跳びで対応されたりします。エセリードブロックでもセンターブロッカーがライト方向に移動していることが多いため、やはりライト平行に二枚つく可能性が高いのです。
もちろん最初から誰に上げるか決まっていないコンビもあります。「平行−ワイド(片足ジャンプのライト平行)」では、相手センターブロッカーがどちらに注意を向けているか、セッターが確認してから上げると良い状況が生まれやすいです。また、エセリードブロックの相手に対して「B−セミ」を使う場合、スパイカーの助走によって「相手にばれているなぁ」と感じたら速攻、「この助走なら上手く相手を振っているだろう」と感じたらセミに上げると良いでしょう。それぞれノーブロックになりやすいからです。セミに入ると相手にばれている場合、相手はそのセミをマークするのが普通で、その分速攻は無警戒になるのです。エセリードブロック相手では、このようにスパイカーの助走によってトス回しを臨機応変に変えるのが、良い結果を生むコツだと思いますがいかがでしょうか。(その上で相手ブロッカーを良く見ることができれば最良。)
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ここまで、各コンビでは誰が打つのか決まっている場合があることについて書いてきましたが、さらにコンビによっては誰はどのコースに打つべきか、まで決まっている場合もあります。例えば、最初に挙げた「相手がバンチブロック(=ネットの中央付近に三人のブロッカーが固まっているシステム)の時は速い平行はノーマークでしょう」という状況では、平行はストレートに打つべきです。クロスに打つと遅れてきた相手ブロッカーに捕まる可能性があるからです。さらに言えば、トスもあまりネットから離さない方が良いですね。速い平行のトスが割れた場合、それをストレートに打つのは難しいからです。
予定通り決めたら盛り上がろう
コンビを使う利点として欠かせないのがチームを盛り上げると言う側面です。特に予定通りノーマークをつくって決めた場合など、練習の成果が発揮できたわけですから盛り上がらないほうがおかしいくらいです。また、相手にとってもノーマークを決められると「してやられた!」という敗北感を持つわけですから、その心理状態につけこむ意味でもこちらの盛り上がりは重要です。事前に相手の弱点がわかっている場合などは、試合の序盤でノーマークをつくる可能性も高いですから、ぜひベンチも一体となって盛り上がってください。
チームによってはオープン攻撃も大切な選択肢の一つ
実はオープン攻撃も大切な選択肢の一つです。普段はコンビバレーを展開していても、リズムが崩れた場合などはオープン攻撃で試合のペースを変えてみるのです。
また、チームに頼れるエースがいる場合、大事なところではコンビよりもオープン攻撃のほうが決定率が高い場合もあるぐらいです。ここで当然次のような疑問が湧いてくると思います。「オープン攻撃のほうが決定率が高いなら、全部オープンにすれば良いじゃないか!」と。しかし、それは違います。オープンでの決定率が高いエースは、普通いくつもの「決めるパターン」を持っています。しかしそのパターンは有限であり、何本も打ち続けていると次第に相手に対応され、決定率が下がってしまうのです。
逆に考えてみると、コンビは決めるパターンを簡単に増やす方法だとも言えます。オープンを決めるパターンを10個から11個に増やすことより、セミで決めるパターンを3個身に付けるほうが簡単でしょうから。
ここまでで誤解しやすいと思うのは、「オープンに対応されるのを恐れて普段は控えているのなら、コンビもひとつにこだわると対応されるはずだ。だから色々なコンビを混ぜていった方が良い。」という考えです。しかしコンビの場合は違います。それが決まり続けている限り、それに相手が対応してくるまでそのコンビを使うべきなのです。
ではオープンとコンビはどうして違ってくるのでしょうか? それは、あるコンビに対応された場合、そのコンビを使わなくすれば良いのに対し、オープン攻撃に対応されてきたからオープン攻撃を使わないでおこう、というわけにはいかないからです。オープン攻撃は試合終盤の勝負所で必ず使わなければならないのです。その時にオープンが決まらければ、せり負ける原因にもなりかねません。もちろんスタミナの問題もあります。
さらにコンビの場合、それが決まり続けているということは相手の弱点を上手く突いていると言う事でしょう。それに相手が対処してくる前に他のコンビを使うと、得てしてそれが相手のブロックのカモになったりするものです。ですので、コンビは同じものをしつこく使い続けるというのも大切な戦術です。ワンパターンで良い場合も多いのです。
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(2000年10月)